「自分のやりたいことを全部最速でかなえるメソッド 高速仕事術」を読んで
やりたいことがあった場合、まず本とかで情報収集して、それからやるのではなく、まずやってみて、失敗して、そこを調べて改善するというイメージです。
ただ、いろいろなことに挑戦できますので、私にとっては本当に役立っています。
ビジネス書研究会メンバーが紹介する今月のビジネス書 ~『無形資産が経済を支配する: 資本のない資本主義の正体』を読んで
こんにちは、《 MASA 》です。
今月紹介するのはこの本です。「意識、価値感の転換」について考えさせられる一冊でした。
無形資産が経済を支配する
: 資本のない資本主義の正体
企業は、見たり触ったりできないものも所有しています。目には見えなくとも、それを構築するには時間もお金もかかります。そうした見えない資産には企業が長期にわたって恩恵を受ける価値があり、そして、競合他社に対する優位の源泉ともなる重要なものです。これらは無形資産と呼ばれ、非財務情報として扱われ、バランスシートには現れません。
近年のメディアの記事の中に、無形資産、見えない資産、人的資本、人材価値といった表現が見られないことが無いほどに関心を集めているテーマでもあり、本書は、まさに今読んでおくべき一冊であると思いました。
ジョナサン・ハスケル
現代経済において注目すべき重要な点は、企業や政府が行う投資の対象が「有形のもの」から「無形のもの」へと変化していることです。いまや、一部の先進国では「無形投資」が「有形投資」を上回っているといいます。この変化は長期的なものであり、そして、「無形資産」には「有形資産」とは根本的に異なる独特の経済的特性があるため、無形集約度が高まる現代経済において様々な現象を引き起こしているのです。
これまで、グローバル化と産業構造の変化について考える場合、先進国とそれ以外の国々といった対比が前提にありました。先進国における産業構造のサービス化と経済成長の鈍化、一方での中国やインドといった国々の経済成長の大きさです。そして、1990年代以降の情報技術の急激な発展がその背景にあります。しかし、本書によれば、経済の質的な変化は、半導体革命以前の1940年代、あるいはそれ以前に始まっているかもしれないといいます。著者の研究によれば、すべての国を合計すると、無形投資が有形投資を金融危機の頃に追い越したことを示唆しており、アメリカでは、1990年代半ばに無形投資が有形投資を追い越したと考えられます。
身近な例えとして、スポーツジムやスーパーマーケットが挙げられています。40年前のスポーツジムやスーパーマーケットを見回すことができるならば、おそらく、今のスポーツジムやスーパーマーケットとかなり似ているので驚くかもしれません。例えばスポーツジムの場合、ウエイトマシンは少ないだろうし、古くさく感じるかもしれないが、目に見える「形のある資産」はほぼ同じものだからです。しかし、現代のスポーツジムは、1977年とは違う様々なものに投資しています。フロントデスクのコンピュータにあるソフトは、会員を記録し、クラスを予約し、スタッフのローテーションをスケジュール管理して、中央のデータベースとつながっています。そして、目には見えないが、 長期的にスポーツジムが機能して儲けるのに役立つものもあります。各種広告キャンペーンを通じて構築されたブランドやスポーツジムの運営マニュアル、トレーニングプログラム(ワークアウト方法のアイデア)などです。
こうした投資は、伝統的な会計基準によれば費用として処理されるため、資産として計上されません。バランスシートに資産計上されない以上、資本とはなり得ず、それが故に、企業にとって価値ある資産でありながら、競争力を高めるために必須の投資であるとの認識が阻害されてきたのかもしれません。いまだに有形の「モノづくり」を称し、伝統的な会計基準の視点から脱することができないことが今の日本経済の有する諸課題の根源にあるのではないだろうかと考えさせられました。
無形資産の特徴である「4S」の分析は、本書をもっとも特徴づける部分であるかもしれません。「スケーラビリティ」、「サンク性」、「スピルオーバー」、「シナジー」の頭文字のSから名付けた「4S」の解説はとても説得力があるものです。「4S」がもたらす「不確実性」と「紛争性」が現代社会の様々な現象を引き起こしていることがとてもよく理解できました。本書の後半部分がそれが及ぼす影響にあてられており、著者の主張が詳しく述べられています。無形経済において政府、企業、経営者が考えるべきことやとるべき行動についてなど大変読みごたえがあります。
当たり前に受け入れていた前提に目を向け、時には検証することが大事であること、そうしなければ、ゲームのルールが変わってしまっていることを見落としてしまう可能性があることに気付かされました。「ゆでガエルの現象」に対する警鐘です。無形資産に対する支出が企業にとって価値ある投資であるならば、それを慎重に見極めなければならない。そして、「損益計算書の支出項目の中から何をどれだけ削減できるか」といったコスト削減策は、直ちに着手できることかもしれないが、根本解決の先送りに過ぎず、必ずしも正しい助言ではないかもしれないと考えさせられました。
経営者は、本書で示されている無形資産の特徴のひとつである「スピルオーバー」、「シナジー」といった、機会や可能性に対する感度を高めなければならず、また、主体的に、経済環境という競争の舞台が変わっている可能性、競争のルールが変わっている可能性について正しく認識しなければならないことを強く感じました。
*バランスシートには現れない価値あるもの
【製品やプロセスの開発】
・製品デザイン、ブランド価値
【組織能力への投資】
・社内構造、研修で構築した人的資本
【市場で競争できる立ち位置を作り出すプラットフォーム】
・サプライチェーン、取引業者との価値ある合意
*こうしたものが本書において触れられています
アップル社のデザインと、そのサプライチェーン
トヨタ自動車のカンバン生産システム
コカ・コーラ社の製造レシピ、ブランド、ライセンス合意
ウーバーやAirbnbのようなシェアリングエコノミー企業のサプライヤネットワーク
インスタグラム利用者のネットワーク
スターバックスのブランド、店舗マニュアル
Googleの検索アルゴリズム
*無形資産の分類(本書からの抜粋)
・コンピュータ化情報・・・ソフトウェア開発、データベース開発
・イノベーション財産・・・経研究開発、鉱物探索、娯楽・芸術的原作、デザイン、製品開発費用
・経済能力・・・研修、市場調査、ブランディング、BPR(業務改革)
【本書より】
無形資産に対する議論・研究の歴史
・ごく最近まで、資産は触れることが出来るモノだという発想や、投資が物理的なモノを買ったり作ったりすることだという考え方は国や経済学者たちにとってあたりまえのことだった。
・1960年代には、経済学者たちが知識への支出が長持ちするのではと考え始めた。全米経済研究所(NBER)は1960年に、「発明活動の速度と方向性」について大規模な会議を開催した。
・1987年に、ロバート・ソローが、コンピュータ時代の影響はあらゆるところに見られるのに生産統計にだけは出てこないと述べた。アメリカ経済分析局(BEA)を筆頭とする統計機関は、情報や情報技術の扱いを細かく検討し始めた。
・1990年代、当時アメリカ連邦準備制度理事会の議長だったアラン・グリーンスパンの発言:どこかにニューエコノミーがあるはずなのに統計機関がそれを捕らえていない。
・1999年にアメリカ経済分析局(BEA)は、アメリカのGDPにソフトウェアも投資として含めた(イギリスでは2001年からこの手法を導入)。
ソフトウェアの資本化で、アメリカでは1999年のGDPが1.1%上積みされた(2012年は2.5%、この数字は増える一方)
無形投資の増加要因
・産業構造(製造業とサービス業のバランス変化)
製造業の生産性は、オートメーションと労働節減設備によって、サービス産業に先行して大きく上昇する。労働集約型サービスの値段は製造業と比べて割高になる。投資総額の中で、多くを労働に依存している無形投資の占める割合が次第に有形投資を上回るようになる。
・技術と無形投資の生産性
新技術には多くの無形投資が必要。例えば、情報通信技術、ソーシャル技術。例えば、ウーバーの運転手ネットワークは、理論的にはコンピュータやスマートフォンの発明以前にも可能だった。
・自由化の拡大・・・事業環境の変化
1980年代以降、製品市場と労働市場の両方において規制緩和が着実に続いた。無形投資の国際比較によれば、「雇用厳格度(雇用と解雇に対する制約)」が低い国ほど無形資産への投資が多い。新しい組織開発投資(新しい無形資産)を導入するならば労働者は働き方を変えねばならなくなる。労働力が柔軟で無いと、そうした投資は敬遠されるかもしれない。
・グローバル化・・・市場規模拡大
貿易が発展途上国に開かれると(例えば、2000年に中国がWTOに加盟したとき)、先進国は自分が比較優位を持つ部分にさらに専門特化しなければならなかった。
無形資産には有形資産とは異なる経済特性がある(4S)
スケーラビリティ スケーラブルな投資の多い経済で見られること
①無形集約的な企業が巨大化する。(例)スターバックス、グーグル、マイクロソフト、フェイスブック
②比較的少数の支配的な大企業が登場する(産業集中)。巨大市場に挑戦する企業と、尻込みする企業に分かれる。
③勝者総取りのシナリオが普通になる。追随者たちの報酬はしばしばわずかなものとなってしまう。
サンク性 サンク性が企業の行動に影響する
①「埋没費用の誤謬」が「確証バイアスなどの認知バイアス」と結びつくと、良い意思決定が不可能になる。サンクコストにこだわりすぎて、損切りしたがらなくなる。
②楽観的な過剰投資を引き起こす。そしてバブルが頻繁に生じるようになる。破裂した時の痛みを大きくする(価値がゼロになるかもしれない)。
スピルオーバー 無形資産のスピルオーバーが紛争を引き起こす
①企業が投資の成果を隠したがったり、利己的な形でしか共有しなくなる。
②無形投資から最大限の利益を引き出せる企業、他人の投資からのスピルオーバーを活用するのがうまい企業が成功する。
③スピルオーバーは地理的な格差に影響する(都市化の謎)。
シナジー シナジーが企業の行動にもたらす影響
①自分のアイデアをできるだけ多くのアイデアに触れさせようとする強いインセンティブが生じる(顕著な例がオープンイノベーション)。
②シナジーはスピルオーバーとの緊張関係を作り出す。門戸を閉ざし強い財産法に頼るか、シナジーの機会を減らすか。
③シナジーは、競合他社に対する優位性を与える(競争戦術)。