中小企業診断士 お勧めビジネス書紹介

ブログを立ち上げ8年目になりました。 広島在住の中小企業診断士5人がビジネス書を活用した経営診断やアドバイス能力向上の研究を行っています。 メンバーお勧めのビジネス書を紹介していきます。

【メンバー紹介】
岩ちゃん: 情報通信会社勤務。一冊の本をじっくりと分析。
MASA: 金融機関勤務。読書数豊富。経営戦略系が好み。
AY: 法律関係勤務。企業診断に活かせる本を購読。 
もっちゃん: メーカー勤務。ラノベから専門書まで何でも読むタイプ。
YI: リサイクル関連企業勤務。とりあえず流行りのビジネス書はサラッと読む。

(過去のメンバー)
モリカ: ブログの管理人。メーカー勤務。ビジネス書は乱読してきたが、後に残らないタイプ。
クラ: 事務職勤務。自己啓発書が得意分野。
まっさん: エネルギー関連会社勤務。中国古典をはじめ幅広く購読。
ささどん: メーカー勤務。経営に関する定番本を手始めに購読。
K: エネルギー関連会社勤務。企業診断に活かせる本を購読。

【これまでに紹介したビジネス書一覧】
http://businessbookstudy.doorblog.jp/archives/52174232.html

2025年、人は「買い物」をしなくなる
望月 智之
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
2019-11-15

 いかにもありがちな扇動的なタイトルでの本で、正直あまり期待をしていなかったところもあったが、「買い物」のあり方がどのように変化してきて、今後どのように向かっているか、分かりやすく整理してある好著だ。
 著者は、企業にデジタルマーケティング支援をするコンサルティング会社を経営していて、Eコマース戦略の第一人者ということだが、海外の事情にも明るく、どんどん変化していくデジタル市場を冷静に分析している。


 私も時代の波に飲まれ、インターネットを利用して買い物をすることが増えてきた。ただ、よく考えてみると、「インターネットを利用した買い物」とは言っても、買い方は、どんどん変化している。この本を読んで思い返してみて、気がついたことだ。

 10年以上前だろうか、スマホなどなかった時代は、何か(例えば家電のようなもの)買おうとする時には、パソコンの前に陣取り、まずググッて、どんな売れ筋商品があるのかを確認し、某巨大掲示板で評判を確認し、価格ドットコムで値段を確認し、いくつかにしぼった上で、実店舗に行って、現物を手に取り、そこで気に入れば購入する(あまりに値段が違えば、家に帰ってパソコンからポチる)といった手順を踏んでいた記憶である。
 ところが、最近は、暇を見つけて、スマホを開き、そのままアマゾンのサイトに行ってみて、アマゾンが「Amazon's choice」としてトップに表示しているものを見て、そこの口コミを見て、まあ大丈夫だと思えば、そのままポチってしまう。
 多かれ少なかれ、私と似たように変化している人は多いのではないだろうか。

1 買い物は面倒くさい

 本著は、「買い物は、面倒くさいもの」と位置づけ、「買い物」がどのように変化してきたかを明快に説明する。
 「買い物」は、店に行くために身支度するのが面倒、店に行くのが面倒、売り場を探すのが面倒、レジに並ぶのが面倒、商品を持って帰るのが面倒…。
 これらを解決するのが、最近は、ECとかEコマースとか呼ばれるようになった、「ネット通販」であり、その市場規模は順調に拡大している。

 実は、買い物の面倒くささは、それだけにとどまらない。たくさんの商品から選ぶのが面倒、たくさんの商品を比較するのが面倒、商品説明を読むのが面倒、価格を比較するのが面倒…。
 近年は、一時は隆盛をきわめた価格比較サイトは下火となり、アマゾンをはじめとしたECサイトがますます力を増している。特に、若い人の商品選択は、ECサイトのAIによるおすすめと口コミによるところが大きくなっているという。

 こうした動きを、事業者側から見ると、「商品棚の奪い合い」から「デジタルシェルフ」へ、という変化で捉えることができる。
 以前は、店舗の商品棚のもっとも目立つところにできるだけ多く商品を置いてもらうことが営業マンの腕の見せ所であった。今や「商品棚」は、店ではなく、個々の持つスマホの中にある。AIによる選択に商品を売る側が関与できない以上、ネット上の「口コミ」で好評を得ること、すなわち、インフルエンサーマーケティイグという営業手法に力を入れていくことになってきている。近年クローズアップされてきた「D to C」の考え方もこの流れだ。

 こうした動きに、IoTが結びつき、5Gによって飛躍的に大量の情報が飛び交うようになったら、どうなるだろうか。たとえば、冷蔵庫から牛乳がなくなったら自動的に送られてきたり、スマートウォッチの情報から自動的に不足している栄養のサプリメントが送られてきたり…、と私達が「買い物をする」という意識をすることなく、様々なものを購入することになっていくのではないか。
 著者が「買い物をしなくなる」というのは、こうした予測を指しているが、かなり近い未来、これが現実化していくことは十分にありそうであるし、まして、このコロナ禍の流れからは、ますますこうした動きは加速していくそうである。

2 ものは「所有しない」

 近年の消費傾向の特徴として、著者が指摘するのが、消費者が「所有」に価値を見出さなくなってきていることである。
 旧世代の人間にとっては、「高価なものを所有すること」が一つのステータスであった。自動車・マイホーム・別荘など、所有していることで幸福感を得られることも多かった。
 しかし、現在の若い世代では、この感覚がどんどん希薄になっている。所有することのリスクやコストを減らしたいという人が増えている。

 音楽や映像のコンテンツ配信に代表される「サブスクブーム」は、こうした「脱・所有」の流れと、「買い物の面倒くささ」が結びついたところに生まれている。CDを買いに行ったり、レンタルしたり、選んだりするのは面倒、CDプレーヤーにセットするのは面倒、テープにダビング(もう古いか)するのは面倒…。一定額を支払えば、スマホで何でも聴けるサービスが支持されるわけである。

 実は、「メルカリ」が支持されているのも、脱・所有の流れだ。メルカリで中古の洋服を購入し、1回使用しただけでメルカリに出品する。これは、形式的には「短期的な売買」であり、一時的には所有しているが、実質的には、売値と買値の差額をレンタル代金だと考えられ、購入者も所有しているという実感はない。
 アパレル業界では、セール品が売れないという現象があるという。セール品は、メルカリ等の中古市場で値崩れするために、手を出す人が少なくなっているというのだ。

 私もメルカリはたまに利用する。音楽が好きなので、オーディオ製品を売ったりする。捨てるのがもったいないから売りに出す、というつもりでいたのだが、言われてみると、売って得たお金を使って、新しいオーディオを買っているのであって、一定期間、レンタルしていたという方が正しい捉え方のような気もしてきた。

 

 本著には、ほかにも、今後のマーケティングのヒントになりそうな事例が、海外事例も含め、いくつも紹介されており、現在そして近い将来の消費行動のあり方を整理して把握するには、大変勉強になる本であり、おすすめである。

こんにちは、《 MASA 》です。

本書は、フレデリック・ラルー氏が、革新的な次世代の組織モデルを提唱する一冊です。ビジネス書として多くの賞を受賞しており、長くベストセラーにあります。

最初に目に入ったのは、帯に書かれた『上下関係も、売上目標も、予算もない』との一文でした。いったい、どういう理論構築なのだろうかと興味を持ちました。


 ティール組織は、組織の進化過程におけるもっとも新しい組織モデルです。ティールは色の名前で、一般的には「青緑色」と呼ばれ、鴨の羽色とも言われるそうです。本書においては、人の意識の発達段階と組織モデルを名前と色をつけて呼んでいます。著者は、思想家のケン・ウィルバーが提唱した、人間・組織・社会を多様な視点から統合的にとらえるインテグラル理論を用いて、それぞれの段階を象徴する形容詞を選択しています。

本書を手にしたときには予想していなかった思い掛けない内容でした。人の意識の発達という着眼点から組織の進化を分析する内容には驚かされました。現代の組織の問題が人の問題であることは周知の共通認識であり、人の問題に対しては様々な理論が提唱されていますが、問題解決の方法のひとつとして、本書の内容は十分に納得性の高いものであると思いました。
 著者が
12のパイオニア企業を調査して導き出した共通点は三つあります。著者は、それを「三つの突破口(ブレイクスルー)」と呼んでいます。「自主経営(セルフマネジメント)「全体性(ホールネス)「存在目的」です。この三つの突破口(ブレイクスルー)のいずれかに一歩踏み出している企業がティール組織であると著者は主張しています。

組織の進化において、現代のグローバル企業にあたるのがオレンジ(達成型)パラダイムに基づく組織形態です。 物質的で合理性に価値観の軸が置かれ、人間関係よりも業務遂行を優先させることが多い。達成型組織における影の側面が「恐れ」であり、それが人の問題の根本原因であることを著者は指摘しています。著者は、オレンジ(達成型)組織を例えるならば「機械」。一方、ティール(進化型)組織は「生命体」であると解説します。人が血液を循環させたり、呼吸をするのに、脳がそれを管理しているといえるのだろうか?

12のパイオニア企業の事例においては、組織の運営から階層を無くし、少人数のチームが自律運営するティール組織の顕著な実例が紹介され、詳しく解説されています。組織に階層は無く、チーム内にリーダーも管理職もいません。また、人事部、企画部、スケジュール管理部、技術部、製造用IT部、購買部といった部門はすべて閉鎖され、営業部門も解体されています。達成すべき目標もありません。業績の評価や給与、雇用や解雇についてもチームで決定します。
 結果はどうだったのか?なんと、生産性は下がらず、むしろ上がっていることが明らかになったそうです。ミドル・マネジメントがなく、スタッフ機能もほとんど存在しないため、普通の組織とは異なり、相互信頼による統制が効き、不安や恐れが払拭されて信頼関係とともに責任感が生まれ、階層性よりもはるかにうまくシステムを統制したのです。

オレンジ(達成型)組織における「管理と統制」は、ティール(進化型)組織における「自律(少人数チームでの協働)に、「職場で仮面をかぶるといった恐怖に対する自己防衛」は、「人間性を職場に呼び込み、ありのままの自分で仕事に取り組むことに伴う、主体性・創造性」に、「目標数値や勝利それ自体が目的にとって代わる弊害」は、「真の存在目的に耳を傾けて意思決定を行う組織文化」に変わることができたのです。

管理と統制を徹底することに伴う負担と、信頼を裏切られた場合の影響との対比、従業員を信頼出来ない不安が過度の管理や統制を生み出していること、それが本来の企業の目的に向けた心の中からの声を押さえ込み、人の能力発揮の制約になっているかも知れないという点について考える必要がある事に気付かされました。
 最初から最後まで、重要な論点が示される充実した内容の一冊です。「働き方」や「従業員満足」に関心のある方々にも気付きを与えることが出来ると思います。一読をお勧めします。

3
【ティール組織について補足しておくこと】

過去の組織モデルを否定していない。

組織モデルは優劣ではない。

進化型組織が最良であると主張しているわけではない。
現代においては、いくつもの組織モデルが共存している。

明確なビジネスモデルがあるわけではない。

組織の運営方法は、10社あれば10社とも違う形をとっている。

必ずしも、三つの突破口(特徴)全部を備えているわけではない。

組織は段階的に変化していくもの。そして変化は流動的である。

一度にすべてを変えようとするのではなく、進化型組織の三つの突破口である

 「自主経営」「全体性」「存在目的」のどれか一つから始めて、時間の経過とともに

 ほかの二つを導入していくと無理なく進められるかもしれない。

リーダーがどの段階のパラダイムを通して世界を見ているかが制約となる。

 どんな組織も、リーダーの発達段階を超えて進化することはできない。

リーダーが変わると、従来型の経営体制に戻ってしまった例もある。

企業診断実務にはそぐわないかも知れない。
企業と状況を見定める必要があると思います。

しかし、着眼点として認識しておく意義はあると思います。

【本書の構成】

部 歴史と進化

     ~過去と現在の組織モデルを分析

部 進化型組織の構造、慣行、文化

     ~新しい段階の12のパイオニア企業から共通点を見出す
部 進化型組織を創造する

      ~新しい組織モデルが機能するための条件はなにか?

【本書より:意識の発達と組織の進化について】
 これまで、多くの学者たちが、人の意識の発達段階を詳細に分析してきた。それによると、人類はおよそ10万年の歴史の中で、いくつかの連続的な段階を経験してきた。
 各段階で、周りの世界に対処する人々の能力は、知的にも、倫理的にも、心理的にも飛躍的に伸びてきた。そして同時に、意識の発達段階が次の段階に移動するたびに、あたらしい協働のあり方、言い換えれば新たな組織モデルを生み出してきたのだ。発達心理学は、人類の意識がまさに移行しようとしている次の段階について多くのことを主張している。そして、人類が意識の次の段階へと成長すると、組織モデルもそれに応じて発展するはずである。

【本書より:パラダイムと組織形態の進化】

1

2

受動的パラダイム
 人類にとって最も初期の発達段階。時代はおよそ紀元前10万年~5万年頃。人々は家族などの血縁関係という小さな集団で暮らしていた。集団の規模はせいぜい十数人。自我は十分に形成されていない。人々は他人から自分を、あるいは環境から自分を完全には区別してとらえられない。生存を支えているのは狩猟、分業を必要としないので組織モデルのようなものはまだ何もない。一族の中には階層が存在せず、リーダーシップを発揮する長もいない。
神秘的パラダイム
 およそ15千年前。集団の規模は小さな家族から数百人の人々で構成される部族へと拡大し、心理的にも、認知的にも、複雑な物事に対処できる能力へ飛躍する大きな一歩となった。因果関係、つまり原因と結果に対する理解は不十分で、世界全体が神秘に満ち満ちている。不思議な世界を静めるため、部族は儀式を行ったり、古老や巫女に従うことで安心を得ようとする。ほとんどの人は「今」を生きており、将来を予想する人はほとんどいない。とりわけ死は現実のものとは見られておらず、死への恐れは極めて乏しい。この段階になってもまだ組織は存在していない。
衝動的パラダイム
 今から約一万年前に、最初の首長制と原始的な王国が、そして、組織生活の最初の形態が生まれた。自我は完全に目覚めており、人々は他者からも世界からも異なった存在としての自己を認識している。自我を意識して最初に感じるのが恐れであり、死が初めて現実的なものとなる。世界は危険で、力強さとたくましさがなければ自らの欲求を満たせない場所に見える。他者より強ければ、自分の欲求を満たすことができる。他者の方が強ければ、降参して庇護を求めるだろう。アメとムチのような単純な因果関係も理解されている。ものの考え方も、白黒をはっきりさせる世界観で成り立っている。他者と自己を区別できるので、役割分化、つまり、本格的な分業も可能となる。組織には一人の長と多くの歩兵が存在する。大規模な奴隷制も診られるようになる。現代では、ギャングやマフィアなどにまだ見られる組織。トップは、いつも残虐性を示して罰を与え続けなければならない。組織の崩壊を防ぐのは恐怖と服従だけだからだ。
順応型パラダイム
 順応型の意識が生まれた人類は、道具をほとんど使わずに単純農法に依存していた部族社会から、農業、国家、文明、制度、官僚制、そして宗教団体の時代へと飛躍した。因果関係という概念は理解されており、人々は線形的な時間の流れを把握し、将来に向けた計画を立てることができる。こうした土台があると、農業が発展可能となる。植物を育てるには、今年の収穫物から種子を取って来年に備えるという、自己規律と将来を展望する力が必要だからだ。因果関係が存在し、線形的に時間をとらえ、他人の視点を意識する世界で安心を得るために、順応型の自我は秩序、安定、予見性を求める。そして制度や官僚制を通じた統制をつくりだす。厳密に定義された役割と自己認識の中に安らぎを見いだす。組織は中長期で計画を立てられるようになった。規模を拡大できる安定した組織構造をつくれるようになった。
達成型パラダイム
 意思決定の基準が倫理から有効性に変わる。最善の判断とは、最大の結果をもたらす判断のことだ。人は権威や、集団の規範や、代々受け継がれてきた体制に疑問を抱くことができる。第二次世界大戦が終了し、西洋世界では達成型パラダイムへとシフトする人々の割合が飛躍的に拡大した。達成型の認識は、科学的な研究、イノベーション、起業家精神への水門を開いた。わずか二世紀という、人類全体の歴史から見ればほんの瞬きするほどの間に、達成型組織は私たちに未曽有の繁栄をもたらした。この段階での世界観は実に物質的だ。見える、触れるものしか信じない。達成型パラダイムは、経験的に証明や観察ができないものをなかなか信じられない。私たちは、出世する、人生の伴侶を見つける、新しい家に引っ越す、新車を買うといった目標を達成すると幸せになるはずだ、という前提で生活している。達成型組織を具現化したのが現代のグローバル企業。エゴを失う恐れが善意を蝕むことも多い。イノベーションとモチベーションを促すために意思決定の権限移譲を進めるというのは、達成型組織を運営するリーダーにとっては至極真っ当な考え方だ。しかし、実際には、統制をあきらめることへの恐れが部下への信頼に勝ってしまい、本来移譲すべき意思決定権を上層部が放そうとしない。人々は仕事用の仮面をかぶるようになる。自分の弱みを外に見せることはない。
多元的パラダイム
 人生には、成功か失敗か以上の価値がある。多元型パラダイムは、人々や社会に対する達成型パラダイムの影を十分に意識している。それは、物質主義、社会的不平等、コミュニティの喪失だ。多元型パラダイムに従って活動しているごく少数の人たちが、奴隷制の廃止や女性の解放、政教分離、宗教の自由、そして民主主義を唱え始めた。達成型組織が今日の企業や政治において支配的であるのに対し、多元型はポストモダンの学術思考、非営利組織、社会事業家、地域社会活動家の中によく見られる。この見方に立って仕事をしている人々にとっては、仕事の成果よりも人間関係の方が価値は高い。多元型組織はボトムアップのプロセスを模索する。多元型組織で最も重要なのは、その会社の文化だ。
進化型パラダイム
 進化型パラダイムに移行して初めて、意識は進化すること、そして、世界に対処するための複雑で洗練された方法に向かおうとする気運が高まっていることを認識するようになる。意識レベルが一段高くなると、世界をより広い視点から眺められるようになる。進化型では、意思決定の基準が外的なものから内的なものへと移行する。自分の内面に照らして正しいかどうか、つまり「この判断は正しそうか?」「私は自分に正直になっているか?」「自分がなりたいと思っている理想の人物は同じように考えるだろうか?」「私はこの世界に役立っているのだろうか?」を重視する。

 こんにちは。岩ちゃんです。
 今月紹介するのは、「コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法」です。

コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法
名和高司
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2018-07-12


【はじめに】
 中小企業診断士としての診断に直結する本を読みたいと思い、本書を手に取りました。著者は、マッキンゼーのディレクター、ボストンコンサルティンググループのシニアアドバイザーを務めた方ということで興味を持ちました。

【内容】
 本書の構成は、「Ⅰ 問題解決」に始まり、「Ⅱ 価値創造」につながる流れとなっています。
 まず、「Ⅰ 問題解決」を紹介します。ここでは、「問題解決の7ステップ」が書かれていました。
  ステップ1:問題を定義する
  ステップ2:問題を構造化する
  ステップ3:優先度をつける
  ステップ4:分析方法を設計する
  ステップ5:分析を実施する
  ステップ6:発見内容を統合する
  ステップ7:提言する
 なかでも、ステップ1,2が最も重要であり、ここで課題設定がうまくいくと問題解決の50%を占めるということです。

 ステップ1「問題を定義する」では、「デイワン(Day1)仮説」(コンサルに入った最初の日に立てる仮説)を持つことが重要とありました。この仮説においては、通説を疑うことが必要で、当初クライアント企業が解決を相談してきた問題以外のところにこそ、本当の問題があるという仮説ものとに分析するということでした。
 また、問題の本質の見つけ方として、WHAT?(何が問題なのか?)WHY?(なぜそれが問題なのか?)に加えて、WHY NOT YET?(なぜまだそれができていないのか?)まで深掘りする必要があるとのことです。
 私は、これまで「デイワン仮説」は意識してきましたが、WHY NOT YET?は意識しなかったため、今後意識してみたいと思いました。

 ステップ2「問題を構造化する」では、ステップ1での仮設をイシュー(論点)ツリーに構造化することが書かれています。例えば、仮説をイシュー(論点)1,2,3に分解し、それぞれのイシュー(論点)をサブ・イシュー(論点)1,2,3に分解するイメージです。
 実際には、経験を積まないとすぐにはできないだろうと思いました。今後、意識して使ってみたいです。

 ステップ3「優先度をつける」では、全体に対するインパクトの大きさにしたがって、サブイシューに優先順位をつけ、80:20の法則(パレートの法則)から、重要な20%の部分に絞るとありました。
 診断先への提案において、何でも提案しがちでしたが、実際に実行する部分は優先順位の高い20%に絞って提案することが重要と理解できました。

 ステップ4「分析方法を設計する」,5「分析を実施する」は割愛します。

 ステップ6「発見内容を統合する」,7「提言する」では、重要なのはもっとも正しい答えを出すことではなく、答えを当事者に信じさせ実行させることとありました。
 何をどういう順序で解いていったらいいか、誰をどういう役割で巻き込むべきかなど実行に向けたストーリーが不可欠とのことです。
 コンサルの役割としては、全体像をしっかり押さえ重要なイシューが漏れないようにすること、推進体制とスケジュールを明確にすること、KPI(重要業績評価指標)をきっちり経営者・現場と握ることとありました。
 私がこれまで行った診断では、推進体制とスケジュールのあたりは提案が弱かったと思うため、今後は意識していきたいと思います。

 次に、「Ⅱ 価値創造」を紹介します。企業として大切な視点としては、2050年の展望のような超長期計画と、毎週・毎月といった超短期の計画(KPIを定めて実行)を持つことが重要で、中期の計画はあまり重要でないとのことでした。
 大前研一氏からの学びとして、究極どうなるかについては、かなりの確率で予測できる(例えば、ガソリンエンジンは、いずれはなくなる)とのことです。
 変化の激しい世の中のため、超長期計画と超短期計画を重点的に持つというのは、なるほどと思いました。
 
【おわりに】
 以上、本書の概要を紹介しました。中小企業診断士としての診断に直結させたいとの思いで読み進めましたが、1度読んだだけでは使えないと思うため、実際の診断の際に本書を振り返りながら、活用していきたいと思います。

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