中小企業診断士 お勧めビジネス書紹介

ブログを立ち上げ7年目になりました。 広島在住の中小企業診断士6人がビジネス書を活用した経営診断やアドバイス能力向上の研究を行っています。 メンバーお勧めのビジネス書を紹介していきます。

【メンバー紹介】
岩ちゃん: 情報通信会社勤務。一冊の本をじっくりと分析。
MASA: 金融機関勤務。読書数豊富。経営戦略系が好み。
AY: 法律関係勤務。企業診断に活かせる本を購読。 
もっちゃん: メーカー勤務。ラノベから専門書まで何でも読むタイプ。
K: エネルギー関連会社勤務。企業診断に活かせる本を購読。
YI: リサイクル関連企業勤務。とりあえず流行りのビジネス書はサラッと読む。

(過去のメンバー)
モリカ: ブログの管理人。メーカー勤務。ビジネス書は乱読してきたが、後に残らないタイプ。
クラ: 事務職勤務。自己啓発書が得意分野。
まっさん: エネルギー関連会社勤務。中国古典をはじめ幅広く購読。
ささどん: メーカー勤務。経営に関する定番本を手始めに購読。

【これまでに紹介したビジネス書一覧】
http://businessbookstudy.doorblog.jp/archives/52174232.html

こんにちは。YIです。
2020年最初の紹介は、

幸福学×経営学 です。



1.選書理由
 自社の働きがい向上の一環として、幸福学を学んでいるため、広く知ってもらいたいため。社員の幸せという視点で経営を考える良いきっかけになると思う。

2.本書のテーマ
 誰もが働くことで幸せになり、かつ、企業の業績も伸ばしていくために必要なことは何なのか。
 幸せのメカニズムを研究する独自の学問「幸福学」の視点から、これからの経営に求められる新しい会社のあり方を考える。

3.要旨
 幸せの姿は多様でも、幸せに至るメカニズムは共通である。
例えば、お金・モノ・社会的地位などの「地位材」と呼ばれる他人と比べられる幸せはその時限りで長続きしない幸せである。一方、治安が良い、有害物質が少ない、紛争リスクが低い等の外的な環境要因や、健康状態などの身体的要因、愛情、社会への帰属意識といった形のない心的要因は他人や周囲との比較と関係ない「非地位材」は地位材と異なり、幸福感はより確かで、長続きする特徴がある。
 この形のない心的要因による真の幸せは何によってもたらされるのかを、調査したのが幸せの因子分解であり、分析の結果たった4つの因子に分解された。これら4つは互いに深く関わり合っており、4つの因子をバランスよく育てていくと幸福度が高まる。
 第一因子:「やってみよう!」因子(自己実現と成長の因子)
  目標に向かって努力、学習している人は幸せであり、それらを通じて成長の実感や自己実現の達成感が得られれば、幸福度がさらに高まる。
 第二因子:「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)
  誰かを喜ばせたり、愛情を受けたり、人とのつながりによって、幸せを感じることができる。
 第三因子:「なんとかなる!」因子(前向きと楽観の因子)
  楽観性や前向きさがあれば、多少のことは気にならなくなる。
 第四因子:「ありのままに!」因子(独立と自分らしさの因子)
  他人や周囲を過度に気にせず、自分らしさを保持できれば「地位材」に手が伸びそうになるのを抑えられる。
 
 この4つのバランスが崩れている職場や組織では働く人の幸福度が低く、ひどい場合は疲弊しきって健康を害したり、離職に追い込まれたりしかねない。
 
 幸せな社員は会社や組織の成長に資する有益な特徴、強みがたくさんある。
かいつまむと、「幸福度の高い社員ほど、創造性が高く、仕事の効率も高く、求められた以上の働きやソーシャルサポート(困っている同僚などへの手助けや食事に誘うなど物質的・心理的支援)を惜しまない。
欠勤率や離職率は低く、上司や顧客から高い評価を受ける傾向がある
」など。
 創造性については、「幸せな人はそうでない人に比べて創造性が3倍高い」という具体的な数字まで出ている。

 「幸せの経営」で本当に結果が出るのか?儲かるのか?と疑う人は少なくない。たしかに、社員をとことん厳しく追い込むことで、顧客が期待する以上の成果を上げるという方法もある。しかし、それでは短期的に儲かっても、決して長続きはしない。社員は疲弊するばかりで、時代の変化に適応するアイデアやイノベーションの源泉となる創造性も直ぐに枯れてしまう。先ほど述べた「地位材」を求めるのと同様である。長い目で見れば、「幸せの経営」に徹する企業の方が、より持続的で安定的な成長を見込めることに疑いの余地はない。

 また、ある研究によると「幸せは伝染する」ことも分かっている。社員が幸せになれば、会社全体が幸せになり、社員や会社が幸せになれば、その幸せは社会全体へと波及していくだろう。

4.中小企業診断士の視点
 
「社員の幸福」という捉えどころのない数値化が難しい課題に対し、解決となるフレームワークは今の所、見つかっていない。本書では、複数のホワイト企業「=社員の幸せ、働きがい、社会貢献を大切にしている企業」が紹介されているが、それらの企業に共通しているのは「自分たちの企業は何のために存在するのか?」「自分たちは何のために生きるのか?」という存在の本質は何かを掘り下げ、自らを認識している点である。
 課題解決の答えがコモディティ化されていると言われている現在、コンサルタントの質問力として問題の本質を見抜くためには「企業は何のために存在しているか?」という原点に立ち戻った質問も効果的だと考える。

以上


こんにちは。もっちゃんです。


今回紹介するのは、


Death by amazon デス・バイ・アマゾン――テクノロジーが変える流通の未来  です。



デス・バイ・アマゾン テクノロジーが変える流通の未来

城田 真琴著
日本経済新聞出版社
2018-08-23
1,600円(税抜)





わずか20年で世界最大のECサイトを築いた稀代の経営者、ジェフ・ベゾス率いるアマゾンの台頭によって、多数の企業が存続の危機に直面しているのは紛れもない事実である。
 座して死を待つかアマゾン・サバイバーとして生き残り勝ち抜いていくのか。本書では、主に流通・小売り分野を軸にアマゾンの戦略と競合の取り組みについて解説している。
 「デス・バイ・アマゾン」とは、アマゾンの台頭によって窮地に陥るであろう上場企業銘柄の株価を指数化したものである。日本では、「アマゾン恐怖銘柄指数」と呼ばれている。
 
・消える店舗、消える店員
 アメリカや日本でも百貨店、アパレルを中心とした小売店の閉店が相次いでいる。しかし、これはアメリカや日本の国民が買物をしなくなったわけではない。e-コマースとの競合では、大規模な店舗を構え、品揃えが充実しているだけでは、生き残ることができなくなっているからである。
 逆にアマゾンがリアル店舗に進出している。その狙いは、「アマゾン・プライム」の会員をさらに増やすことにある。アマゾンのリアル店舗である「アマゾン・ゴー」の目的は、顧客の行動データの補足であると推定される。リアル店舗では商品の実際の質感などを確認するだけで、その場では購入せず、ネットで店舗より安い価格で購入する。ショールームに徹するということである。

・ショッピング・エクスペリエンス
 店舗でしか経験できない、つまり「ショッピング・エクスペリエンス(購買体験)」が、EC事業者との差別化、さらにはオンライン/オフラインを問わずに競合他社との差別化につながるという。
 そこで、顧客が進んでリアル店舗に足を運ぶ動機を作り出さなければならない。「スターバックスはコーヒーを売っているのではない。体験を売っているのだ。」元会長ハワード・シュルツの言葉である。顧客にとって、スターバックスを第三の場所(サードプレイス)にしてもらうために、店舗のデザインやBGM、接客などに徹底的にこだわり抜いてきた。顧客にとってリラックスして自分らしさを取り戻せる第三の場所として。

・物を売らないサブスクリプションレンタル
 アマゾンに「殺されない」ためには、アマゾンと同じ土俵に乗らないことが、一番の近道である。例えば、商品を売らないレンタルサービスであれば、アマゾンが直接の競合相手ではなくなる。最近では若年層を中心に、モノを「所有」することに抵抗を覚える人が増えており、シェアリングサービスやレンタルサービスなど「利用」するサービスに注目が集まっている。特に今後有望と思われるのは、サブスクリプション型のレンタルサービスである。「サブスクリプション」とは、継続課金型のビジネスモデルを意味し、毎月決まった金額を支払うことによって、その対価として何かしらの商品を受け取ったり、サービスを利用したりできることである。最近では、日常的に使う洋服やバッグ、時計、ワイシャツなどを対象として、サブスクリプションモデルを適用した点に新規性がある。サブスクリプションサービスを提供する企業には、顧客の信頼を得て、長期的な関係を維持する努力が求められるようになる。そのため、各社はサービスの提供を通じて得られる膨大なデータを熱心に分析している。

・アマゾン・サバイバーの戦略

 アマゾンの影響を受けづらい企業で構成する「アマゾン・サバイバー」。アマゾンと真正面から戦わずに、少しでも何かをずらし、アマゾンの持つ強みを発揮させないようにするにはどうしたらいいのか。例えば、消費者を惹きつける圧倒的な商品力で差をつける、顧客一人ひとりの好みに合わせて製品をカスタマイズする、商品自体で差別化できない場合サービスに付加価値をつける、などである。ポイントは、「圧倒的な商品力」、「カスタマイズ&パーソナライズ」、「サービスの充実」といった点である。

以上


こんにちは。AYです。
令和時代の1回目の紹介は、

山口周著「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」

です。



 何かのビジネス関係のテレビ番組で著者がコメンテーターとして出演していて、そこで発言していた内容が興味深かったことが本書を選んだきっかけ。これもうろ覚えだが「私が携帯電話会社のコンサルティングをしていたことがある。(著者が以前所属していた)ボストン・コンサルティング・ファームで培った能力を活用して、膨大なデータを集めて分析を重ねて、もっとも売れるであろう商品を開発して世に出した。いざお店に行ってみると、自分の会社の商品がどれか分からないくらい、どのライバル会社も似たような商品を並べていた。」といったような話だった。

2 この本の主張
 乱暴にまとめてしまうと、こんな話である。
 「経営上の意思決定は「論理・理性・サイエンス」と「直感・感性・アート」とをバランスよく働かせることが必要だが、現在の多くの経営者は「論理・理性・サイエンス」に大きく偏っており、これがビジネスの行き詰まりの原因となっている。で、これを乗り越えるためには、「美意識」を鍛えろ、そのために美術館に行って絵を見てこい。」
 「絵を見に行け」の部分はともかくとして、現代の経営の問題点を指摘する部分はとても鋭いもの。理解しておかなければならないものと感じたので、個人的な感想も加えながら、以下、いくつかあげつらってみる。

(1)「正解のコモディティ化」が起こっている
    多くの人が分析的・論理的な情報処理のスキルを身につけた結果、世界中で「正解のコモディティ化」という問題が発生している、という。先の携帯電話の例は、まさにこれ。データ収集、データ分析の手法を皆がある程度マスターできるようになったから、同じ課題に対して皆が同じ答えを出してくる。
    これでは「差別化の消滅」ということになる。皆が皆、頑張って経営手法を身につけると、皆でレッドオーシャンに飛び込んでいくというなんとも皮肉な現象だ。
    昨今話題になるAIなんていうものに経営の意思決定をさせると、多分どの会社にあるAIも同じ答えを出す。ますます「正解のコモディティ化」は進むことになる(やはり、診断士の仕事はAIには不向き?)。
    「差別化」を図るためには、経営者はどうすべきか。経営者に「直感・感性」に基づく判断がより望まれる時代になってきたのではないか。

(2) 世界中が「自己実現的消費」へ向かっている
 マズローの欲求5段階説というのを覚えているだろうか。その欲求の最終的な形態は「自分らしい生き方を実現したい=自己実現欲求」だった。商品やサービスに求められるものも同じ。以前は、機能的便益や価格競争力が求められていて、これには論理的・理性的なアプローチで対応できた。でも、今や途上国に至るまで、そのレベルの商品は満ちあふれている。現在求められているのは、機能や価格は当然のこととして、さらに自己実現欲求を満たす商品やサービスである。
 精密なマーケティングスキルだけでは、こうした状況にますます対応できなくなっていくはず。「感性」「美意識」が重要なのではないか。

(3) システムの変化にルールが追いつかない状況での判断が求められている
 様々な領域で、システムの変化が早過ぎてルール・法律が追いついていない状況にある。この状況では、明文化されたルール・法律に頼るのではなく、自分なりの「真・善・美」の感覚に照らして意思決定をしていく必要があるはず。旧ライブドアやDeNAの不祥事は「ルール上禁止されていないから、やってもいい」という発想で失敗してしまった悪い例の典型。グーグル社は、社内に人工知能の暴走を食い止めるための倫理委員会を設置していると言われている。「美意識」に従った行動が必須。

(4) 「サイエンス」が偏重される理由~アカウンタビリティの格差
  「論理・理性・サイエンス」と「直感・感性・アート」を主張を戦わせると、必ず前者が勝つ。意思決定の方法を言葉で説明しようとすると、次のようになってしまう。
        「サイエンス」:様々な情報を分析した結果、このような意思決定をした。
        「アート」:なんとなく、フワッと、これがいいかなと意思決定をした。
 サイエンスの方がアカウンタビリティを持つ。現代は、強くアカウンタビリティを求められる状況にある。役員に対する説明、株主に対する説明・・。直感的な意思決定は、言葉で説明しにくいという性質上、どうしても端に追いやられてしまう。
  でも、実は、アカウンタビリティは「無責任」である。間違った意思決定であっても、「あの時はそのように判断することが合理的だった」という言い訳ができる。意思決定者の責任放棄の方便に使われているのである(これは見事な指摘だ)。

(5) 「サイエンス」偏重の会社が不祥事を起こす
    「論理・理性・サイエンス」に偏った経営をすると、レッドオーシャン市場に踏み込んでいくことになる。その中で勝ち残っていくためには、既存事業の枠組みを前提にして数値目標を設定し、ひたすら現場の尻をたたくという「科学的マネジメント」に邁進することとなる。これが粉飾決算だったり労働法規違反だったりを引き起こす。東芝にしてもエンロンにしても、不祥事を起こす直前まで、科学的経営管理を世間から賞賛されていた。

3 中小企業診断士としての視点    
 この本は、上記のような問題点を、たくさんの具体的な人物や会社、ビジネス外の学問成果もフル活用して、わかりやすく説明してくれる。じゃあ、どうやって「直感・感性・アート」を鍛えるの?という部分に対する回答(絵を見に行けとか、詩を読めとか)は少し弱いが、そんな質問をすること自体が「サイエンス偏重」の考え方なんだろう。
 中小企業の視点でいくと、「論理・理性・サイエンス」で経営スキルを戦わせた場合、人も金も情報も十分にある大企業の物量作戦に中小企業はなかなか太刀打ちできない。でも、経営者の「美意識」であれば、大企業の社長も中小企業の社長も同じ土俵で戦える。中小企業の「直感」が生み出した商品が世界を変えるようなことは今後いくらでも起こるだろう。
 こんな視点も、中小企業支援のヒントになるかもしれない。    

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