中小企業診断士 お勧めビジネス書紹介

ブログを立ち上げ11年目になりました。 広島在住の中小企業診断士6人がビジネス書を活用した経営診断やアドバイス能力向上の研究を行っています。 メンバーお勧めのビジネス書を紹介していきます。

【メンバー紹介】
岩ちゃん: 情報通信会社勤務。一冊の本をじっくりと分析。
MASA: 金融機関勤務。読書数豊富。経営戦略系が好み。
AY: 法律関係勤務。企業診断に活かせる本を購読。 
もっちゃん: メーカー勤務。ラノベから専門書まで何でも読むタイプ。
YI: リサイクル関連企業勤務。とりあえず流行りのビジネス書はサラッと読む。
のるくん: メーカー勤務の診断士×技術士。古典から科学技術まで経営視点で乱読。

(過去のメンバー)
モリカ: ブログの管理人。メーカー勤務。ビジネス書は乱読してきたが、後に残らないタイプ。
クラ: 事務職勤務。自己啓発書が得意分野。
まっさん: エネルギー関連会社勤務。中国古典をはじめ幅広く購読。
ささどん: メーカー勤務。経営に関する定番本を手始めに購読。
K: エネルギー関連会社勤務。企業診断に活かせる本を購読。

【これまでに紹介したビジネス書一覧】
http://businessbookstudy.doorblog.jp/archives/52174232.html

 こんにちは。岩ちゃんです。
 今月紹介するのは、「コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法」です。

コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法
名和高司
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2018-07-12


【はじめに】
 中小企業診断士としての診断に直結する本を読みたいと思い、本書を手に取りました。著者は、マッキンゼーのディレクター、ボストンコンサルティンググループのシニアアドバイザーを務めた方ということで興味を持ちました。

【内容】
 本書の構成は、「Ⅰ 問題解決」に始まり、「Ⅱ 価値創造」につながる流れとなっています。
 まず、「Ⅰ 問題解決」を紹介します。ここでは、「問題解決の7ステップ」が書かれていました。
  ステップ1:問題を定義する
  ステップ2:問題を構造化する
  ステップ3:優先度をつける
  ステップ4:分析方法を設計する
  ステップ5:分析を実施する
  ステップ6:発見内容を統合する
  ステップ7:提言する
 なかでも、ステップ1,2が最も重要であり、ここで課題設定がうまくいくと問題解決の50%を占めるということです。

 ステップ1「問題を定義する」では、「デイワン(Day1)仮説」(コンサルに入った最初の日に立てる仮説)を持つことが重要とありました。この仮説においては、通説を疑うことが必要で、当初クライアント企業が解決を相談してきた問題以外のところにこそ、本当の問題があるという仮説ものとに分析するということでした。
 また、問題の本質の見つけ方として、WHAT?(何が問題なのか?)WHY?(なぜそれが問題なのか?)に加えて、WHY NOT YET?(なぜまだそれができていないのか?)まで深掘りする必要があるとのことです。
 私は、これまで「デイワン仮説」は意識してきましたが、WHY NOT YET?は意識しなかったため、今後意識してみたいと思いました。

 ステップ2「問題を構造化する」では、ステップ1での仮設をイシュー(論点)ツリーに構造化することが書かれています。例えば、仮説をイシュー(論点)1,2,3に分解し、それぞれのイシュー(論点)をサブ・イシュー(論点)1,2,3に分解するイメージです。
 実際には、経験を積まないとすぐにはできないだろうと思いました。今後、意識して使ってみたいです。

 ステップ3「優先度をつける」では、全体に対するインパクトの大きさにしたがって、サブイシューに優先順位をつけ、80:20の法則(パレートの法則)から、重要な20%の部分に絞るとありました。
 診断先への提案において、何でも提案しがちでしたが、実際に実行する部分は優先順位の高い20%に絞って提案することが重要と理解できました。

 ステップ4「分析方法を設計する」,5「分析を実施する」は割愛します。

 ステップ6「発見内容を統合する」,7「提言する」では、重要なのはもっとも正しい答えを出すことではなく、答えを当事者に信じさせ実行させることとありました。
 何をどういう順序で解いていったらいいか、誰をどういう役割で巻き込むべきかなど実行に向けたストーリーが不可欠とのことです。
 コンサルの役割としては、全体像をしっかり押さえ重要なイシューが漏れないようにすること、推進体制とスケジュールを明確にすること、KPI(重要業績評価指標)をきっちり経営者・現場と握ることとありました。
 私がこれまで行った診断では、推進体制とスケジュールのあたりは提案が弱かったと思うため、今後は意識していきたいと思います。

 次に、「Ⅱ 価値創造」を紹介します。企業として大切な視点としては、2050年の展望のような超長期計画と、毎週・毎月といった超短期の計画(KPIを定めて実行)を持つことが重要で、中期の計画はあまり重要でないとのことでした。
 大前研一氏からの学びとして、究極どうなるかについては、かなりの確率で予測できる(例えば、ガソリンエンジンは、いずれはなくなる)とのことです。
 変化の激しい世の中のため、超長期計画と超短期計画を重点的に持つというのは、なるほどと思いました。
 
【おわりに】
 以上、本書の概要を紹介しました。中小企業診断士としての診断に直結させたいとの思いで読み進めましたが、1度読んだだけでは使えないと思うため、実際の診断の際に本書を振り返りながら、活用していきたいと思います。

こんにちは。YIです。
2020年最初の紹介は、

幸福学×経営学 です。



1.選書理由
 自社の働きがい向上の一環として、幸福学を学んでいるため、広く知ってもらいたいため。社員の幸せという視点で経営を考える良いきっかけになると思う。

2.本書のテーマ
 誰もが働くことで幸せになり、かつ、企業の業績も伸ばしていくために必要なことは何なのか。
 幸せのメカニズムを研究する独自の学問「幸福学」の視点から、これからの経営に求められる新しい会社のあり方を考える。

3.要旨
 幸せの姿は多様でも、幸せに至るメカニズムは共通である。
例えば、お金・モノ・社会的地位などの「地位材」と呼ばれる他人と比べられる幸せはその時限りで長続きしない幸せである。一方、治安が良い、有害物質が少ない、紛争リスクが低い等の外的な環境要因や、健康状態などの身体的要因、愛情、社会への帰属意識といった形のない心的要因は他人や周囲との比較と関係ない「非地位材」は地位材と異なり、幸福感はより確かで、長続きする特徴がある。
 この形のない心的要因による真の幸せは何によってもたらされるのかを、調査したのが幸せの因子分解であり、分析の結果たった4つの因子に分解された。これら4つは互いに深く関わり合っており、4つの因子をバランスよく育てていくと幸福度が高まる。
 第一因子:「やってみよう!」因子(自己実現と成長の因子)
  目標に向かって努力、学習している人は幸せであり、それらを通じて成長の実感や自己実現の達成感が得られれば、幸福度がさらに高まる。
 第二因子:「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)
  誰かを喜ばせたり、愛情を受けたり、人とのつながりによって、幸せを感じることができる。
 第三因子:「なんとかなる!」因子(前向きと楽観の因子)
  楽観性や前向きさがあれば、多少のことは気にならなくなる。
 第四因子:「ありのままに!」因子(独立と自分らしさの因子)
  他人や周囲を過度に気にせず、自分らしさを保持できれば「地位材」に手が伸びそうになるのを抑えられる。
 
 この4つのバランスが崩れている職場や組織では働く人の幸福度が低く、ひどい場合は疲弊しきって健康を害したり、離職に追い込まれたりしかねない。
 
 幸せな社員は会社や組織の成長に資する有益な特徴、強みがたくさんある。
かいつまむと、「幸福度の高い社員ほど、創造性が高く、仕事の効率も高く、求められた以上の働きやソーシャルサポート(困っている同僚などへの手助けや食事に誘うなど物質的・心理的支援)を惜しまない。
欠勤率や離職率は低く、上司や顧客から高い評価を受ける傾向がある
」など。
 創造性については、「幸せな人はそうでない人に比べて創造性が3倍高い」という具体的な数字まで出ている。

 「幸せの経営」で本当に結果が出るのか?儲かるのか?と疑う人は少なくない。たしかに、社員をとことん厳しく追い込むことで、顧客が期待する以上の成果を上げるという方法もある。しかし、それでは短期的に儲かっても、決して長続きはしない。社員は疲弊するばかりで、時代の変化に適応するアイデアやイノベーションの源泉となる創造性も直ぐに枯れてしまう。先ほど述べた「地位材」を求めるのと同様である。長い目で見れば、「幸せの経営」に徹する企業の方が、より持続的で安定的な成長を見込めることに疑いの余地はない。

 また、ある研究によると「幸せは伝染する」ことも分かっている。社員が幸せになれば、会社全体が幸せになり、社員や会社が幸せになれば、その幸せは社会全体へと波及していくだろう。

4.中小企業診断士の視点
 
「社員の幸福」という捉えどころのない数値化が難しい課題に対し、解決となるフレームワークは今の所、見つかっていない。本書では、複数のホワイト企業「=社員の幸せ、働きがい、社会貢献を大切にしている企業」が紹介されているが、それらの企業に共通しているのは「自分たちの企業は何のために存在するのか?」「自分たちは何のために生きるのか?」という存在の本質は何かを掘り下げ、自らを認識している点である。
 課題解決の答えがコモディティ化されていると言われている現在、コンサルタントの質問力として問題の本質を見抜くためには「企業は何のために存在しているか?」という原点に立ち戻った質問も効果的だと考える。

以上


こんにちは。もっちゃんです。


今回紹介するのは、


Death by amazon デス・バイ・アマゾン――テクノロジーが変える流通の未来  です。



デス・バイ・アマゾン テクノロジーが変える流通の未来

城田 真琴著
日本経済新聞出版社
2018-08-23
1,600円(税抜)





わずか20年で世界最大のECサイトを築いた稀代の経営者、ジェフ・ベゾス率いるアマゾンの台頭によって、多数の企業が存続の危機に直面しているのは紛れもない事実である。
 座して死を待つかアマゾン・サバイバーとして生き残り勝ち抜いていくのか。本書では、主に流通・小売り分野を軸にアマゾンの戦略と競合の取り組みについて解説している。
 「デス・バイ・アマゾン」とは、アマゾンの台頭によって窮地に陥るであろう上場企業銘柄の株価を指数化したものである。日本では、「アマゾン恐怖銘柄指数」と呼ばれている。
 
・消える店舗、消える店員
 アメリカや日本でも百貨店、アパレルを中心とした小売店の閉店が相次いでいる。しかし、これはアメリカや日本の国民が買物をしなくなったわけではない。e-コマースとの競合では、大規模な店舗を構え、品揃えが充実しているだけでは、生き残ることができなくなっているからである。
 逆にアマゾンがリアル店舗に進出している。その狙いは、「アマゾン・プライム」の会員をさらに増やすことにある。アマゾンのリアル店舗である「アマゾン・ゴー」の目的は、顧客の行動データの補足であると推定される。リアル店舗では商品の実際の質感などを確認するだけで、その場では購入せず、ネットで店舗より安い価格で購入する。ショールームに徹するということである。

・ショッピング・エクスペリエンス
 店舗でしか経験できない、つまり「ショッピング・エクスペリエンス(購買体験)」が、EC事業者との差別化、さらにはオンライン/オフラインを問わずに競合他社との差別化につながるという。
 そこで、顧客が進んでリアル店舗に足を運ぶ動機を作り出さなければならない。「スターバックスはコーヒーを売っているのではない。体験を売っているのだ。」元会長ハワード・シュルツの言葉である。顧客にとって、スターバックスを第三の場所(サードプレイス)にしてもらうために、店舗のデザインやBGM、接客などに徹底的にこだわり抜いてきた。顧客にとってリラックスして自分らしさを取り戻せる第三の場所として。

・物を売らないサブスクリプションレンタル
 アマゾンに「殺されない」ためには、アマゾンと同じ土俵に乗らないことが、一番の近道である。例えば、商品を売らないレンタルサービスであれば、アマゾンが直接の競合相手ではなくなる。最近では若年層を中心に、モノを「所有」することに抵抗を覚える人が増えており、シェアリングサービスやレンタルサービスなど「利用」するサービスに注目が集まっている。特に今後有望と思われるのは、サブスクリプション型のレンタルサービスである。「サブスクリプション」とは、継続課金型のビジネスモデルを意味し、毎月決まった金額を支払うことによって、その対価として何かしらの商品を受け取ったり、サービスを利用したりできることである。最近では、日常的に使う洋服やバッグ、時計、ワイシャツなどを対象として、サブスクリプションモデルを適用した点に新規性がある。サブスクリプションサービスを提供する企業には、顧客の信頼を得て、長期的な関係を維持する努力が求められるようになる。そのため、各社はサービスの提供を通じて得られる膨大なデータを熱心に分析している。

・アマゾン・サバイバーの戦略

 アマゾンの影響を受けづらい企業で構成する「アマゾン・サバイバー」。アマゾンと真正面から戦わずに、少しでも何かをずらし、アマゾンの持つ強みを発揮させないようにするにはどうしたらいいのか。例えば、消費者を惹きつける圧倒的な商品力で差をつける、顧客一人ひとりの好みに合わせて製品をカスタマイズする、商品自体で差別化できない場合サービスに付加価値をつける、などである。ポイントは、「圧倒的な商品力」、「カスタマイズ&パーソナライズ」、「サービスの充実」といった点である。

以上


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