中小企業診断士 お勧めビジネス書紹介

ブログを立ち上げ11年目になりました。 広島在住の中小企業診断士6人がビジネス書を活用した経営診断やアドバイス能力向上の研究を行っています。 メンバーお勧めのビジネス書を紹介していきます。

2016年02月

こんにちは、《 岩ちゃん 》です。

今年度もあと2ヵ月になりました。
 

10月分の「紹介する本」は以下の通りです。 

○岩ちゃん しつもん仕事術

○MASA スターバックス 輝きを取り戻すためにこだわり続けた5つの原則

○まっさん 貞観政要(じょうがんせいよう)

○ささどん なぜ繁栄している商店街は1%しかないのか

 

それでは、メンバー各人が「紹介する本」をご覧ください。 


○岩ちゃん しつもん仕事術

しつもん仕事術
松田充弘
日経BP社
2012-06-07

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9月に今年度の研究テーマが「具体的な診断への応用」(仮)ということになった。これまで診断した企業の中で「マンダラチャート」を有効に活用しているところがあり、これについて知りたいと考え、本書を読んだ。

「マンダラチャート」は、クローバ経営研究所会長の松村寧雄氏が密教の曼荼羅図にヒントを得て1979年に開発したもの。基本形は中心核を持つ3×3の9マスの図である。本書では、これにあらかじめ「しつもん」を記載した「魔法の質問マンダラチャート」が紹介されている。

まだ読み終わったばかりであり、実際に使っていないが、今後試してみて、効果を確かめたい。診断においてもこちらから提案するだけでなく、「しつもん」を投げかけ、相手に解決策を考えてもらうことも実践してみたい。


○MASA スターバックス 輝きを取り戻すためにこだわり続けた5つの原則


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本書の序文には、リッツ・カールトン・ホテル社長 アープ・アムラー氏による本書の著者ジョゼフ・ミケーリ氏の紹介が掲載されています。紹介文によれば、「ミケーリ博士は顧客満足の専門家で、経営コンサルタントでもある」、「博士の著書は具体的な事例が満載で学習実験室として活用できる」とあります。

本書においても、著者は、二年以上を掛けてスターバックスが事業を展開するすべての地域において調査を行い、あらゆるレベルのリーダーとパートナーに対して500時間以上のインタビューを実施しています。

その結果、著者が導き出したリーダシップの原則として、以下の五つの項目が紹介されています。①情熱を高める、②愛することで愛される、③共通点を見い出す、④つながりを結集する、⑤伝統を守り、ときに挑戦する。以下は、本書の章立てですが、このリストだけでも役立つものではないだろうかと思いました。


【本書の章立て:強い絆を結ぶための5つの原則】

①情熱を高める

 ・売り手が情熱を抱けない商品にお客様が情熱を抱くだろうか?

 ・つねに変わらず一貫性を保つ

②愛することで愛される

 ・信頼と愛情が企業の価値を決める

 ・最高のサービスはパートナーの成長からしか生まれない

③共通点を見い出す

 ・人間の普遍的なニーズを満たす

 ・地域の声に耳を傾ける

④つながりを結集する

 ・テクノロジーを活用してつながりをそだてる

⑤伝統を守り、ときに挑戦する

 ・過去は大切にするが、とらわれてはいけない

 ・持続的な成功を築くために長期的な視点を持つ

 ・暮らしに溶け込み真のつながりを育む


著者によれば、スターバックスのリーダーシップを表現する言葉は、「つながり」「人間らしさ」「謙虚さ」「情熱」「愛情」であり、一般的なリーダシップ論ではあまりお目に掛からない表現であるとのことです。

本年度七月には、「スターバックス 成功物語」(スターバックスを世界的企業に育てあげたハワード・シュルツ氏の自伝的内容)を読み終えましたが、同書が経営者の視点であったのに対し、本書は外部の第三者の視点であり、大変興味深く読み進めることが出来ました。また、具体的な社内での取り組みから社員教育まで、多くの実例が紹介されており、とても内容の濃い一冊です。本書の内容を汎用化して実務に活かすことが出来るだろうかと考えてみたいと思いました。


○まっさん 貞観政要(じょうがんせいよう)


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貞観政要は名君の誉れ高い中国・唐の太宗(在位626~649年)とそれを補佐した魏徴や房玄齢などの名臣たちとの政治問答集である。治世の教科書として日本でも古くから読み継がれ、鎌倉北条氏や徳川家康の愛読書としても有名である。

企業経営のあり方では「創業」と「守成」の難易について議論がなされるが、貞観政要を貫いている主題は守成の心得である。その意味で成熟社会にある今日の経営者や管理者の必読の書と言える。


●身おさまりて国乱るるを聞かず

名君の条件は、まず自らの奢侈や欲望を抑えて万民の手本となる私生活をおくり、臣下の諫言をよく聞き入れた上で人材を登用し適材適所に使いこなすことである。
●安きに居りて危うきを思う

太宗は創業と守成という二つの困難を克服して唐王朝の基礎を固めたが、この言は守成の心構えとして述べられている。企業経営でも長期的な展望を行う中で、いつも最悪の事態を想定してその対策を用意すべきことを示唆している。
●君は舟なり、水は人なり

太宗は『荀子』にある「君は舟なり、庶民は水なり。水は舟を載せ水はすなわち舟を覆す」という言葉を治世の心構えとして肝に銘じていた。
●その長を用いずしてその短を見る

人使いのコツは「短所を見ずに長所をみよ」とされるが、これは「短所に目をつぶれ」というわけではなく、相手の短所と長所を十分心得たうえでその長所を発揮させるということである。
●なんぞ人なしと謂わん

君主が臣下の忠誠や献身を期待するには、まず君主の側が相手の価値を認めてそれにふさわしい待遇を与えることが肝要である。そうすれば「士は己の知る者のために死す」忠義の士が現われる。
●禍福は人の招くところ

幸、不幸には決まった門があって入ってくるわけではない。みな人が招き寄せるものである。わが身を不幸に陥れるのは利益を貪ろうとするからである。これはまったく餌を貪って人手にかかる鳥や魚と異ならない。
●政をなす要は人を得るにあり

政治の要諦はなによりも人材を得ることである。能力のない人間を登用すれば必ずや政治に混乱をもたらすであろう。今、人材の登用にあたってはまず徳行と学識を基準にすべきである。


○ささどん なぜ繁栄している商店街は1%しかないのか


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著者は中小企業診断士として商店街活性化のコンサルティングと調査に携わった経歴を持つ。残念ながら現在はコンサルティング活動を停止しているが、本書ではこれまでの仕事の中で感じたことを率直に述べ、タウンマネージャーの人材確保と商店街組合活動から個店本業への回帰により商店街が活性化するとの結論に達している。

本書では「商店街」という言葉が場所だけでなく、組合などの組織を指す場合もあり、補助金は組織である商店街(振興組合など)に流れて、行政の支援する「まちづくり」に誘導されていることを指摘する。何とかして“補助金を使っていただきたい”自治体職員が事業をできそうな商店街組合に“お願いして”補助金を使った事業をしてもらっている相互依存の構図である。

そこで既存の商店街組合とは独立したタウンマネージャーを雇用することでこの構図を改めることを提言し、著者の活動事例も紹介されているが、タウンマネージャーの専門性が明確ではなく、また雇用のための財源にも問題があり、提言通りの対応は難しいであろう。

商店街の多くは好立地であり、新規の出店には向いていると思われる。出店を促進し、商店街組合の運営に若い商店主も加えて、より素直な視点で商店街組合活動を進め、補助金ありきではない活性化へつなげていくべきと考える。


こんにちは、《 MASA 》です。


前回の更新から少々時間が経過してしまいました。
駆け足で追いついていこうと思います。
 

9月分の「紹介する本」は以下の通りです。

○岩ちゃん どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力

○MASA ヒトラーランド ナチの台頭を目撃した人々

○まっさん 失敗の本質 日本軍の組織的研究
 ○ささどん 
逆転の競争戦略 [第4版]


それでは、メンバー各人が「紹介する本」をご覧ください。

10月分以降の「紹介する本」もお楽しみに!

〇岩ちゃん 

どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力




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7月にハイアールの本を読んだ際に、ネットでハイアールアジアの伊藤嘉明社長のインタビュー記事を見た。ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントや日本コカ・コーラ等で成果を出した人ということで、もっと詳しく知りたいと思っていたら、8月にご自身で書かれた本が出版されていた。

読み終わって、今後、世の中は大きく変わっていき、新しい発想が更に必要になってくると感じた。その際、「まずは大きな絵を思い描く」「知識よりも経験よりも、姿勢が大事」といったことを実践してみたい。本から非常に元気をもらえた。


MASA 

ヒトラーランド ナチの台頭を目撃した人々

ヒトラーランド――ナチの台頭を目撃した人々
アンドリュー・ナゴルスキ
作品社
2014-12-19






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本書のタイトル『ヒトラーランド』とは、第一次世界大戦後のドイツで暮らしたアメリカ人ジャーナリスト達が、人を惹き付けてやまない街という意味を込めて『ベルリン』を呼んだものだそうです。

本書においては、当時のドイツを体験した外国人記者、大使館職員、その家族らが残した多くの記録が紹介されています。

著者の言葉には、「なぜあれほど大勢の、教養があり、勤勉で、偉大な文化を築き上げてきた人々が、ひとりの独裁者に盲目的に従ったのか?」とあります。そして、「さまざまな状況と人格とが、特殊な形で組み合わさって生み出されたもの。こうした恐ろしい事態を呼び込んだ国民性も関与している」としながら、「答えは今も出ていない」とも述べています。

 本書を読んで驚いたことのひとつは、ヒトラーの『ナチ党』が、選挙で多数の議席を確保、法律を議会で通過させるなどして合法的に権力を掌握していったことです。また、国民の支持を得るための努力を惜しまなかった面があったこと、ヒトラーが国民にもたらした恩恵があったことにも驚きました。

 組織を動かす為に必要なものは何なのか、現状分析・状況判断の難しさ、リーダーシップについて、多くを考えさせられる一冊でした。

*本書より

【外国人記者達の見たドイツの一面】

「みすぼらしい外壁や壊れたフェンスはどこにもない。あらゆるものが清潔で、きれいにペンキを塗られていた。まるで夢のようだった。待ちゆく人たちはみな小奇麗な服を着て、栄養のあるものを食べ、健康そうに見えた」

 

「当時のベルリンはとても安全だった。酔っぱらい、浮浪者、同性愛者などは、みな強制労働所に入れられていたからだ」


【ヒトラーの言葉】

ヒトラーは、「自分がこれまで、平和のために数えきれないほどの努力を重ねてきたにも関わらず、ポーランド軍がドイツ領に攻撃を仕掛けたため、反撃せざるを得なかった」と釈明した。

 

ヒトラーはドイツ国民全員の支持を受けていると主張した。「イギリスとフランスの、ドイツを破壊しようという意思そのものが破壊されるまで、永続的な平和の確立が可能だとは思わない。ドイツを破壊しようという意思そのものを破壊できる方法はただひとつ、ドイツの完全なる勝利だけだ」

 

「われわれはユダヤ人ばかりを攻撃しているわけではない。むしろ主要なターゲットは社会主義者や共産主義者だ。アメリカはそういった人間を国外に締め出したではないか。だから、われわれがいま彼らに対する方策を講じたところで、責められる筋合いはなにもない」


まっさん

失敗の本質 日本軍の組織的研究








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本書のねらいは、大東亜戦争での大規模な6つの作戦を、組織としての日本軍の失敗ととらえ直し、これらを現代の組織にとっての教訓、あるいは反面教師として活用することである。

●あいまいな戦略目的

日本軍の大東亜戦争の開始・終結の目的は“長期戦に持ち込んで敵の戦意を喪失させる”のように極めてあいまいであった(ガダルカナル戦での戦力の逐次投入、レイテ沖海戦や沖縄戦での短期決戦と長期持久線との方針対立)。一方、米軍は当初から“中部太平洋諸島の拠点化による本土直撃”を大戦略としてきた。

●短期決戦の戦略思考

戦略目的のあいまいさは、攻撃重視による短期決戦志向と防御、情報、兵站・補給の軽視をもたらした(ミッドウェー作戦での暗号漏えいと索敵軽視)

●主観的で「帰納的」な戦略策定 - 空気の支配

戦略の策定では多分に情緒や空気が支配し、科学的という名の「神話的思考」や「人情論」によって戦況の状況変化に対応できなかった(インパール作戦での兵站無視)

●狭くて進化のない戦略オプション

兵員の練度を極端にまで追求し、銃剣突撃や夜間攻撃という日露戦争以来の戦闘パターンに終始し、「必勝の念」という精神主義とあいまって軍事技術の軽視をもたらした。

●人的ネットワーク偏重の組織構造

組織とメンバーとの共生による対人関係や間柄を重視したため、組織としての作戦展開と終結に関わる合理的な意思決定を遅らせて重大な失敗を招いた。

●属人的な組織の統合

大規模作戦では陸海空の能力統合が不可欠だが、あいまいな戦略目的と人的ネットワーク偏重の組織構造によって、陸軍と海軍の作戦一致は終戦に至るまで実現しなかった。

●学習を軽視した組織

日本軍は、狭い戦略オプションや人的な組織構造に加えて、プロセスや動機を重視する評価制度によって失敗を組織で学習するシステムが欠如していた。一方、米軍では緒戦の戦果を教訓にして陸海軍協働による革新的な水陸両用作戦を実現するなど、絶えず目標や組織の変革に取り組んだ。

 

 日本軍という巨大組織は環境変化に合わせて自らの戦略や組織を変革することに失敗したが、この組織特性をある程度継承したのが戦後の日本の企業組織である。今日の日本企業は過去の成功体験を学習・棄却することで自己革新できるかどうかが問われている。


〇ささどん

逆転の競争戦略 [第4版]


逆転の競争戦略[第4版]
山田 英夫
生産性出版
2014-03-25


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 副題の「競合企業の強みを弱みに変えるフレームワーク」が本書の特徴を表している。
 業界内のリーダー企業が追随しにくい戦略について業界内ポジション(業界破壊者、侵入者、挑戦者)別に解説していく。特に挑戦者の戦略については攻撃の対象(A.競争優位の源泉を攻めるor B.新たな競争要因を追加する)と攻撃の方法(a.企業資産を攻めるor b.市場資産を攻める)の2軸から枠組みを構築して以下の4つの戦略を事例とともに紹介する。

       ①企業資産の負債化(A,aの組み合わせ。以下同)

       ②市場資産の負債化(A,b)

       ③論理の自縛化(B,b)

       ④事業の共喰化(B,a)

 ③、④では「ブル-・オ-シャン戦略」(2005年出版)でも取り上げられた企業の戦略が紹介されている。ポーターの「競争優位の戦略」出版が1985年、本書初版が1995年であることから、「競争優位の戦略」と「ブル-・オ-シャン戦略」をリンクする役割を本書が担っているとも思える。

 ②ではリピーター獲得のための現金カード施策に出遅れたエッソ石油の対抗策が興味深い。「他社の現金カードを持参すれば割引する」とし、他社のカード会員を無効にした戦術を紹介している。

 

本書では業界内ポジション別に戦略の考え方を紹介しているが、同じ挑戦者でも寡占化が進んでいる業界ではより侵入者に近い位置づけとなる。本書で紹介された戦略構築の枠組みをベースに、自社の現状と業界動向の分析を加え、ブラッシュアップしていくことが有効な戦略立案の鍵になると思う。

 

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