こんにちは。Kです。今月紹介するのは,

齋藤和紀著 シンギュラリティ・ビジネス AI時代に勝ち残る企業と人の条件です。



最近、AIやRPAといったことが、世間で話題になることが多い中、その行き着く先であるシンギュラリテイに関して、どのような世界になるのか、そこに至るまでにどのような過程があるのか、その中で、私たちは何ができるのかといううことが書かれています。

シンギュラリテイは、アメリカの未来学者であるレイ・カーツワイルが2005年に発表した著書(日本語訳「ポスト・ヒューマン誕生」)の中で、2045年に技術的特異点(Technological Singularity)という現象が起きるということ、それは、現在も技術は指数関数的に進歩しているが、その技術の進歩する速度が無限大になるということを述べています。

ただ、カーツワイル自身もシンギュラリテイがどんなものになるかは予測できないが、人間の能力が根底から覆り変容するレベルの現象になると述べているようです。実際どんな世界がやってくるのかは誰にもわからないといったところでしょうか。

本書では、行き着く先として、人間が働かなくてもよい世界が来ると言われているということを紹介しています。その過程では、ソーラーパネルの進化で太陽光発電によるエネルギー価格はゼロになり、それとともに「蓄電」と「輸送」の問題も技術的に解消する。そして、太陽光発電により、エネルギー価格がゼロになることで、地球温暖化も水不足も食糧不足もなくなる。その理由としては、化石燃料を使わないエネルギーのため、二酸化炭素排出による地球温暖化というのはなくなり、豊富なエネルギーを利用して、海水の淡水化で水不足も解消し、食用の植物を工場で生産し食料問題も解決できるといったものです。

そうすると人は働かなくてもよくなるとのこと。このような世界では、資本主義の基本的な仕組みが維持できず、富の分配システムが根底から変容していき、政府が最低限の生活を送るための現金をすべての国民に支給するといった制度が必要になるといったことを紹介しています。 個人的には、そのような世界が来たら、ということが、まだ全然想像はできませんが。

ただ、著者自体は、シンギュラリティが起こるかどうかが問題ではなく、その過程で、技術は指数関数的に進歩しているのは事実であり、その事実を踏まえてどうしていくかが、大事だと述べられています。そして、今後、技術が指数関数的進歩をしていくと、ものと情報、メディア、企業、あらゆる境界が溶けて、これまでまったく無関係だと思われていたものが同じ土俵で戦う事になるとしています。具体的には、マスメディアで、新聞・ラジオ・テレビは別ジャンルのメディアだったのが、今ではインターネット上で混ざり合って、メディアの区分をしていない。そのようなことが今後あらゆる業界で起こり、従来の境界線が消え去ろうとしているとしています。

では、組織は、人はどうすればよいのかというと、著者は「柔軟性」ということをキーワードにしています。変わることに対する抵抗をなくし、組織も人も柔軟に対応していくこと。ただし、柔軟にということは、変化を受け入れることであるため、秩序を守ろうとする組織には、なかなか受け入れ難いことであるが、まずは個人の気持ちの持ちようから、変えていこう。そういう訴えかけが感じ取れる一冊でした。

また、著者も、プログラムを修了している、アメリカのシンギュラリティ大学に関しても紹介されており、例えば、「10%アップを目指すより、10倍を目指そう」というような考え方が叩き込まれるといったことなどがありました。

未来に向けて、組織や自分の気持ちの持ちようのあるべき姿のヒントが欲しい人へおすすめの一冊です。