こんにちは。岩ちゃんです。
今月紹介するのは「異文化理解力」です。



【はじめに】
 私自身は、グローバルに仕事をすることはありませんが、中国や欧米と日本がどのように文化的に異なるのか知りたいと思い、本書を購読しました。

【内容】
 本書では、次の8つの指標で各国の文化の違いが紹介されています。
 ①コミュニケーション (明快な物言いを好むか、含みのある物言いを好むか)
 ②評価  (否定的なフィードバックをする際、直接的に伝えるか、間接的に伝えるか)
 ③説得  (人を説得する際、原理を根拠に話すか、事例を根拠に話すか)
 ④リード  (権力者に対する敬意や服従がどれくらい見られるか)
 ⑤決断  (意思決定をする際、どれくらいコンセンサスを重視するか)
 ⑥信頼  (信頼形成の際、仕事の質を信頼するか、人間性を信頼するか)
 ⑦見解の相違  (意見の対立を有益とみなすか、有害とみなすか)
 ⑧スケジューリング (スケジュールを遵守するか、遅延を前提に柔軟に対応するか)

 それぞれの指標について、対極の軸を用いて各国の相対的な位置関係が「カルチャーマップ」として描かれています。私が、特に関心をもったのが①コミュニケーション⑤決断⑧スケジューリングの3つです。

 1つ目の①コミュニケーションについては、ローコンテクスト vs ハイコンテクストという軸で示されています。ローコンテクストとは、共有されている体験や感覚、価値観などが少なく、言語に依存して意思伝達が行われる傾向が強い文化のことです。
 アメリカ、オーストラリア、カナダはローコンテクストで、日本、韓国、中国はハイコンテクストとのことです。
 本書には、「イギリスでは、アメリカと同様、こちらが送ったメールに相手がすぐ回答をできないときは、メールを受け取った相手が24時間以内に電話をかけてきて『メール受け取りました。水曜に返信します』と言うのが常識であり作法」と書かれていました。
 メールを送って、反応がないと、対応してもらっているのか心配になることがあるので、電話までではなくとも、一言返信するのはいい方法と思いました。異なった文化の人とは、できるだけローコンテクストなやり取りを行う必要があることが理解できました。

 2つ目の⑤決断については、合意志向 vs トップダウン式という軸で示されています。
 日本、スウェーデン、オランダは合意志向で、ナイジェリア、中国、インドはトップダウン式とのことです。
 日本では、役職が下のマネージャーたちが検討し合意に至ってから、ひとつ上の役職のマネージャーたちへ意見を渡していく「稟議」という意思決定システムや、提案書を承認する前に、非公式に会合を持って合意を形成する「根回し」が紹介されていました。集団の合意形成に全員が参加するため決断に時間を要するが、いったん決断が下されると、それはほとんどの場合覆らないものなので、実行は非常に迅速になるとのことでした。
 一方、アメリカは、平等主義的な精神を持ちながらトップダウン式の意思決定へのアプローチをし、ひとりの人間がグループ全体を代表してすばやく決断を下すことが紹介されていました。決断は素早いが、決断のひとつひとつは変更可能なものであり、議論を続けるに従って、新しい情報が持ち出され、違った意見が生まれるため、決断は気軽に修正されたり変更されるとのことです。               
 日本の生産性は低いと言われるが、決断に時間を要することが一因となっていると感じました。変化の激しい世の中であり、すばやく、変更可能な決断をしていきたいと思いました。

 3つ目の⑧スケジューリングについては、直線的な時間 vs 柔軟な時間という軸で示されています。
 ドイツ、スイス、日本は直線的な時間で、サウジアラビア、ナイジェリア、ケニア、インド、中国は柔軟な時間とのことです。
 直線的な時間では、プロジェクトは連続的なもととして捉えられ、締め切りやスケジュール通りに進むことが重視されます。一方、柔軟な時間では、プロジェクトは流動的なものとして捉えられ、順応性が重視されます。
 本書には、「私は中国で様々なワークショップに参加したが、どれひとつとして予定どおりには進まなかった。前の晩に決まったことはすぐに変わる。スピーカーも、トピックも、立場すらも。だが結局はすべてうまくいく。中国人は極めて柔軟なのだと一度理解すれば、自分が合わせる限りすべてうまくいく。」と書かれていました。
 どの文化が優れているということはなく、異文化を理解することが大切と感じました。

【おわりに】
 中国や欧米と日本がどのように文化的に異なるのか知りたいと思い、本書を購読しましたが、大変よく分かりました。例えば、中国と日本では、コミュニケーションは似ているが、決断、スケジューリングは真逆です。異文化に触れたときは、本書を思い出し、いろいろな文化のやり方を吸収してみたいと思いました。
 本書は、事例が豊富で、とても読みやすく、自信をもってお薦めできる1冊です。