このブログでは、「ビジネス書研究班」のメンバーお勧めのビジネス書を書評形式で紹介していきます。今回はクラの書評です。





 著者の原田泳幸氏は、2004年2月、アップルコンピューター日本法人の社長から日本マクドナルドのCEOに転じた。当時、同社の業績は危機的な状況にあった。来客数の落ち込みに歯止めがかからない現状、「ハンバーガーは飽きられてしまった」「何をやってもダメだ」という諦念が社員たちの心を蝕んでいた。

なぜ原田マクドナルドは5年間で復活を遂げたのか。

原田氏は、日本でマクドナルドが苦戦していた理由を、「健康志向が台頭したこと」でも「ハンバーガーに対して消費者が飽きたこと」でもない、「マクドナルドらしさを失ったこと」にある、と考えた。

診断のSWOT分析で真っ先に脅威として挙げてしまいそうな事柄を業績不振の要因とせず、原因は内にあるとして、言い訳せず根底から見直そうとする姿勢に感動を覚える。

「マクドナルドらしさ」とは何か。それはアメリカンテイストのボリューム感あるハンバーガーの味、機能的で清潔な店舗、スピーディーかつ温かなサービスにある。その根底にあるのがQSC(品質・サービス・清潔さ)。かつてのその場しのぎの出店攻勢により、既存店舗への投資が後回しになり、現場は荒れた。QSCが悪化して顧客に提供する価値の水準が落ちているところに、価格を下げても「安かろう、悪かろう」だし、新商品を出しても顧客が来店するわけはなかった。

原田氏は就任直後、従業員たちに、まず、「QSCを高める以外のことを考えなくていい」と訴えた。この土台作りなくして、どんな戦略も成り立たないのだ。QSC向上で商品・店舗価値を高めた後、100円メニューを導入し客数アップを狙い、メガマックなどの高価格商品を投入し客単価上昇につなげた。既存店売上高を伸ばした。

大切なのは「シーケンス」。順序であるという。

「らしさ」といえば、時に無性にハンバーガー二段重ねのボリュームたっぷりの「ビッグマック」が食べたくなる。高齢化が叫ばれ、健康志向の中で。

ぶれることなく数々の奇抜な新商品を出してきた理由も興味深い。

多くの企業で経験を積み、実績を残してこられた著者のおっしゃることには説得力がある。参考になる部分も多いのではないかと思う。マクドナルドの身近な商品名が出てくるので、共に年を重ねてきた者としては親しみも感じた。