こんにちは。AYです。今月紹介するのは,

フィル・ナイト著 SHOE DOG 靴にすべてを。 です。


SHOE DOG(シュードッグ)
フィル・ナイト
東洋経済新報社
2017-10-27



 いまや世界的スポーツブランドの一角として確固たる地位を築いている「ナイキ」の創業者フィル・ナイトの自伝です。1962年の創業から1980年の株式公開に至るまで,ナイキが誕生し,大きく成長していく様子が描かれています。

 この本,とにかく面白いです。ちょっとした経済小説よりもはるかに面白いです。フィル・ナイト氏の語り口の滑らかさ,話のうまさは,この人は小説家になっていたとしても大成功を収めていたのではないか,と思わせるほどです。

 アディダス,プーマが世界のスポーツ用品シェアのほとんどを占めていた1960年代,陸上選手となる夢を諦めた24歳の青年が,日本のランニングシューズの可能性に気づいたところから物語(本当は「物語」ではないのですが)は,はじまります。単身で来日し,オニツカ(現アシックス)に乗り込み,いきなりはったりをかまして,アメリカでオニツカのシューズを売る権利を得るところからビジネスが始まります。
 陸上コーチのバウワーマン,手紙魔ジョンソン,巨漢で恐怖症のヘイズ,オニツカの担当者たち,日商岩井のアイスマン…,周囲のたくさんの人達と,時には協力し,時には敵対しながら,ナイト氏のはじめた事業は,成長への道を突っ走って行きます。次々と目の前に現れる困難(本当に毎年のように壁にぶち当たっています)を,ありとあらゆる手を使って乗り越えていく様は,痛快そのものです。
 登場人物のキャラが立っていますし,毎章,毎章,面白いエピソードに溢れていて,時にホロッとする話も入っていたりして,すぐにそのままドラマ化できそうです(「陸王」というよりも「半沢直樹」の系統ですね)。

 診断に生かせるかどうか,という観点からすると,少し「?」かもしれません。(多少話を盛っているところがあるとしても)会社がいつ飛んでもおかしくないような大きな賭けを毎年のように行って,ギリギリのところで切り抜けていく,こんなことを何年も続けていくだけの体力も精神力も,もちろん切り抜けるだけの判断力も,とても凡人には備わっていませんし,他人にこんな経営をお勧めすることもできません。やはり,一代で世界的企業を築き上げるような人は,「超人」です。
 でも,その「超人」でも,こんなにもいろいろな失敗をしつつ悩みながら前に進んできたんだなあ,なんてことを知ると,私のような凡人も,「もっと頑張らなくちゃ。」と勇気が出る,そんな1冊です。

 軽い感じのスカッとするものを読みたい,そんな気分の時のおすすめの1冊です。