こんにちは。もっちゃんです。

今回紹介するのは、

広江朋紀著 なぜ、あのリーダーはチームを本気にさせるのか?――内なる力を引き出す「ファシリーダーシップ」   です。

筆者は組織開発のコンサルタントだが、自ら進んで管理職やリーダーになりたい!という現場の声のトーンが年々、小さくなってきていると感じていた。これは、組織の内外がかつてないほど大きく変貌しつつあり、現場のリーダーはこうした不確実性の高い変数に囲まれながらも、成果を出し続けなくてはならないのが一因と考えた。

そのようなリーダーに変化を迎え撃つ「武器」を提供するために書かれたのが本書である。

 具体的には、メンバーを支援し、一人ひとりの意志やアイデアを引き出し、全体としての価値に変換するファシリーダーシップ(ファシリテーター型のリーダーシップ・スタイル)を体系化した。ファシリーダーシップとは、組織に根ざす課題をリーダーひとりだけの力ではなく、メンバーの力を引き出し、事が運ぶように促すことをいう。

 ファシリーダーシップを発揮するには、人の部位になぞらえて、6つの機能の実践を伴う。

👂:聴く(Listen)→メンバーに力を与え、相互作用を生み出すために、話す前に聴く

👀:観る(Insight)→様々な次元、角度、距離で観ることで、行き詰まりを突破する

👄:問う/語る(Inquire/Tell)→問いかけ、ストーリーを語り理屈を超え感情を揺さぶる

:手と手をつなぐ(Connect)→境界線を越えたつながりの土壌を耕し組織を進化させる

👣:踏み込む(Step into)→踏み込んだフィードバックで、本音が行きかう組織をつくる

🌝:考える(Think)→過去の成功体験を健全に疑い、今ここに立ち止まり、考え抜く

 

それでは、各々の機能をいくつか紹介してみる。

 

【耳:聴く(Listen)】

 人には、根源的に自分の考えや価値観、存在を認めて欲しいという欲求がある。リーダーが心を開き、メンバーの話しを丁寧に聴くことができれば、メンバーもリーダーに心を開く。双方の心が開かれたチームには活発なコミュニケーションがあり、常にアイデアの生成が起こる。

(実践例)Win-Winを実現するI’m OK! You are OK!

 相手も自分も犠牲にせず、お互いWin-Winで聴き合える関係性を築くための、人生の立場(ライフ・ポジション)という考え方。

 ライフポジションとは、①「私も君も大切な存在」、②「君は立派だが、私はダメ」、③「私はいいけど、君はダメ」、④「私もだめだけど、君もダメ」と、自分と相手の立場を4つのマトリックスに分けて考えるものである。当然ではあるが、①の象限を目指す。メンバーとの関係がうまくいっていないと自覚したとき、自分が今、どこの象限にいるのか、確認することから始めることをお勧めする。

 

【目:観る(Insight)】

 「リーダーは、見るのではなく、観る」。リーダーは、深層に根ざす不変の本質を見抜く眼力を持つことが必要である。そのためには、立場の違いによって生じる視界の差を認識し、偏見(バイアス)を外し、ときに、メンタルモデルの変換も促す。

(実践例)グループシンクを回避する「悪魔の代弁者」

 グループシンク(集団浅慮)に陥らないために、悪魔の代弁者と呼ばれる、反駁を展開する手法がお勧めである。チームの中に意見に反対する役割を担うメンバーをひとりは必ず置いたり、何か重要な意思決定をする前に、メンバー全員にひとり1回は状況を疑ってもらうなど、批判的な目をもってもらうだけでも結果は変わってくる。

 

【口:問う/語る(Inquire/Tell)】

 不確実の時代、リーダーには、皆で共創解を生み出すための対話の切り口となる「問いかける力」と、未来に向けてメンバーの心を束ね、集団の力に変えてゆく「ストーリーを語る力」が必要である。

(実践例)ストーリーの黄金則「ヒーローズ・ジャーニー」を使って物語る

 ハリウッドの映画監督が好んで使うパターンに「英雄の旅(ヒーローズ・ジャーニー)」がある。「導入部」で共感できるきっかけとなる出来事が発生し、主人公が冒険に立ち、「中間部」で絶望的な逆境に会い、決意の固さを試され、課題と向き合い、「結末」で目標を達成し、冒険を通して生まれ変わるというストーリーである。

 ヒーローズ・ジャーニーの流れは、①Calling(天命):天命を聴く、②Commitment(旅の始まり):天命に従う、③Threshold(境界線):分岐点を考える、④Guardians(メンター):守護者が見つかる、⑤Demon(悪魔):トラブル・試練に遭う、⑥Transformation(変容):試練を自分の資源(リソース)に変える、⑦Complete the task(課題完了):試練を克服し、天命を全うする方法を見つける、⑧Return home(故郷へ帰る):英雄として帰還する、ことである。

 

【手:手と手をつなぐ(Connect)】

 新しいアイデアやイノベーションは、組織の境界線を越えた専門や経験、視点の異なる多様な人々との出会いから生まれることが多く、そうした関係性の土壌を耕し、智慧や洞察を得て組織をさらに進化させることが、リーダーの役割として必要になってきている。

(実践例)オースティン・クレオン氏のアイデアのよい盗み方と悪い盗み方の区別

 誰かのアイデアをそのまま盗んで使うのではなく、背後にある思想を盗んで改良することで、さらにアイデアが発展する。「思想」、「型」、「形」とあるうち、「形」だけの盗みは再現性に乏しく、発展しない上にオリジナルの本家に失礼である。

GOOD

THEFT

よい盗み方

HONOR

敬意を払う

STUDY

本質を学び取る

STEAL FROM MANY

大勢から盗む

CREDIT

権利を守る

TRANS

FORM

作り替え

REMIX

リミックス

BAD

THEFT

悪い盗み方

DEGRADE

作品を汚す

SKIM

表面をかすめ取る

STEAL FROM ONE

一人から盗む

PLAGIA-RIZE

権利を侵す

IMITATE

ものまね

RIP OFF

パクリ

 

【足:踏み込む(Step into)】

 リーダーは、事なかれの放任主義でメンバーにすべてを委ねるのではなく、停滞や混乱がある際には、摩擦を恐れずにダメ出しを行ったり、良い結果が生まれているのであれば、さらに強化を促すためにポジティブなフィードバックを行う必要がある。

(実践例)承認力を高めるポジティブフィードバック・ピラミッドモデル

 心理学者、マズローの欲求階層説にあるように、人は誰でも根源的に「承認されたい」と思っている生き物である。誰かから認められていると感じると、自然とモチベーションが高まり、能動的に動けるようになる。

 承認には、3つのレベルがある。まずは、メンバーがその人が存在してくれていることに対しての感謝とリスペクトを示す「存在承認」。次に組織で働く以上、何かしらの目的、成果の達成に向けての行動を示すが、その行動、プロセスの取り組みに対しての「行動承認」。最後に、目的、成果を実現したメンバーを称える「結果承認」である。

 

【頭:考える(Think)】

優れたリーダーは、従来の「やり方」、「成功体験」を健全に疑い、自身も常に変化し続ける。そして、時には立ち止まって、「今、ここ」にある本質を探究したり、衆知を集めて組織の智慧に変換するなど、これまでとは異なる質感の「考えるリーダー」が求められている。

(実践例)マインドフルネス瞑想で本質を捉える

最近、各方面で話題にのぼっているマインドフルネス。これは、ブッダが悟りを開いて最初にした説法の中で、人の心に救いの灯をともすために伝えた8つの事項「八支正道」の7番目に登場する「正念」を英語で表現したもので、「今、この瞬間に、評価判断をすることなく意識を向ける」ものである。

マインドフルネスを実践するには、「力を抜いた姿勢に」→「呼吸に意識を向ける」→「雑念が生まれる」→「雑念を手放し、再び息に意識を向ける」の4つのプロセスを繰り返す。

 

以上