こんにちは。YIです。
2020年最初の紹介は、

幸福学×経営学 です。



1.選書理由
 自社の働きがい向上の一環として、幸福学を学んでいるため、広く知ってもらいたいため。社員の幸せという視点で経営を考える良いきっかけになると思う。

2.本書のテーマ
 誰もが働くことで幸せになり、かつ、企業の業績も伸ばしていくために必要なことは何なのか。
 幸せのメカニズムを研究する独自の学問「幸福学」の視点から、これからの経営に求められる新しい会社のあり方を考える。

3.要旨
 幸せの姿は多様でも、幸せに至るメカニズムは共通である。
例えば、お金・モノ・社会的地位などの「地位材」と呼ばれる他人と比べられる幸せはその時限りで長続きしない幸せである。一方、治安が良い、有害物質が少ない、紛争リスクが低い等の外的な環境要因や、健康状態などの身体的要因、愛情、社会への帰属意識といった形のない心的要因は他人や周囲との比較と関係ない「非地位材」は地位材と異なり、幸福感はより確かで、長続きする特徴がある。
 この形のない心的要因による真の幸せは何によってもたらされるのかを、調査したのが幸せの因子分解であり、分析の結果たった4つの因子に分解された。これら4つは互いに深く関わり合っており、4つの因子をバランスよく育てていくと幸福度が高まる。
 第一因子:「やってみよう!」因子(自己実現と成長の因子)
  目標に向かって努力、学習している人は幸せであり、それらを通じて成長の実感や自己実現の達成感が得られれば、幸福度がさらに高まる。
 第二因子:「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)
  誰かを喜ばせたり、愛情を受けたり、人とのつながりによって、幸せを感じることができる。
 第三因子:「なんとかなる!」因子(前向きと楽観の因子)
  楽観性や前向きさがあれば、多少のことは気にならなくなる。
 第四因子:「ありのままに!」因子(独立と自分らしさの因子)
  他人や周囲を過度に気にせず、自分らしさを保持できれば「地位材」に手が伸びそうになるのを抑えられる。
 
 この4つのバランスが崩れている職場や組織では働く人の幸福度が低く、ひどい場合は疲弊しきって健康を害したり、離職に追い込まれたりしかねない。
 
 幸せな社員は会社や組織の成長に資する有益な特徴、強みがたくさんある。
かいつまむと、「幸福度の高い社員ほど、創造性が高く、仕事の効率も高く、求められた以上の働きやソーシャルサポート(困っている同僚などへの手助けや食事に誘うなど物質的・心理的支援)を惜しまない。
欠勤率や離職率は低く、上司や顧客から高い評価を受ける傾向がある
」など。
 創造性については、「幸せな人はそうでない人に比べて創造性が3倍高い」という具体的な数字まで出ている。

 「幸せの経営」で本当に結果が出るのか?儲かるのか?と疑う人は少なくない。たしかに、社員をとことん厳しく追い込むことで、顧客が期待する以上の成果を上げるという方法もある。しかし、それでは短期的に儲かっても、決して長続きはしない。社員は疲弊するばかりで、時代の変化に適応するアイデアやイノベーションの源泉となる創造性も直ぐに枯れてしまう。先ほど述べた「地位材」を求めるのと同様である。長い目で見れば、「幸せの経営」に徹する企業の方が、より持続的で安定的な成長を見込めることに疑いの余地はない。

 また、ある研究によると「幸せは伝染する」ことも分かっている。社員が幸せになれば、会社全体が幸せになり、社員や会社が幸せになれば、その幸せは社会全体へと波及していくだろう。

4.中小企業診断士の視点
 
「社員の幸福」という捉えどころのない数値化が難しい課題に対し、解決となるフレームワークは今の所、見つかっていない。本書では、複数のホワイト企業「=社員の幸せ、働きがい、社会貢献を大切にしている企業」が紹介されているが、それらの企業に共通しているのは「自分たちの企業は何のために存在するのか?」「自分たちは何のために生きるのか?」という存在の本質は何かを掘り下げ、自らを認識している点である。
 課題解決の答えがコモディティ化されていると言われている現在、コンサルタントの質問力として問題の本質を見抜くためには「企業は何のために存在しているか?」という原点に立ち戻った質問も効果的だと考える。

以上